聚LETTER Vol.108(2009.8.20)寄稿文

樹木・環境ネットワーク協会

クリックして大きい画像を取得


マイフィールド グリーンセイバーの輪

インタープリターと名乗る 木村道紘

深田久弥の日本百名山、噴煙たなびく浅間山、コマクサ咲く草津白根山、修験道の霊山・四阿山の三山がそびえ、広い裾野と周囲の2,000 m級の外輪山が腕を伸ばして抱きかかえるようにして巨大カルデラ地形を形作っています。その山あいにある世俗から隔離された集落こそが私達の嬬恋村であり、その姿はまるで私達を山々が災いから護っているかのようです。


カラマツ巨木林をスノーシューで案内する

平成15 年に地域で自然案内の気運が高まり、どこから仕入れてきたのか、垢抜けない僻地の住民には不似合いな「インタープリター」(自然案内人の通称)という名前で活動することになりました。現在、私達の嬬恋村インタープリター会ではボランティア活動から仕事を休んで積極的に受ける有料登山ガイドまで、年間6,000 人以上を森にご案内しています。

インタープリターという名前はプロとして活動している方からすると、気安く使ってほしくない言葉のようです。私も、宿泊業の傍ら自然啓蒙活動を行う人間で、いわゆる正当なプロではありません。例えば才能を錬磨させ突出した技術を取得し、それを持って全国を回り啓発を行っているプロのインタープリターにはとても適いませんが、それでも私達は地元の人間として、参加者に当地ならではの風をお届けし、目の前の自然風景や山や森が、言おうとしていることがあるならこういうことだと思います…というくらいのことは、お話しすることができます。


プログラム「早朝散歩」。
ホテル玄関から徒歩30分でこの絶景

人間間においても、それが動物や植物との間であっても、さまざまな生命が共存するために必要なのは思いやりです。そしてそれは風景と私達の関係にも言い換えることができます。思いやりを持って風景を見れば、それがどんなに私達に優しくしてくれているのかがわかることでしょう。そしてその優しさは、今に始まったことではないことはご承知の通りです。もし自分が長年携わった地域と自分との間でそういう感覚を持つことができたなら、そこの自然風景に流れている意識を感じ取り、まるで家族のことを話すように、誰かに紹介することができるでしょう。

インタープリターとは、動植物の名前や自然の仕組みを教えるだけでは無いという事は、この冊子を読んでいる人なら誰でも知っていることでしょう。また、精神世界に傾倒した霊的なものでも決してありません。「洗練された啓発技術」を取得して日本中で通用するインタープリターになるのか、それとも「地域にこだわり留まる」ことで、その地域に流れる意識を伝えようとするインタープリターになるのか、あなたならどちらのインタープリターを目指しますか?

え!私?…私は不便な立地に住み、あまり出かけられないので、地域派です。お蔭様で「足るを知る」ことができ、マイフィールドでは肩の力が抜けた自由自在さが出るようになりました。

いかがでしょう、あなたも、インタープリターと名乗り、何かを伝えてみませんか?

フィールド情報
所在地:群馬県吾妻郡嬬恋村
連絡先:mail@naturekimura.jp(木村道紘)




2009年アーカイブスに戻る

Naturekimura Archives index に戻る