「虹の谷」計画

※この試みはもう止めました。理由はこちら

万座温泉周辺には素晴らしい紅葉の景勝地があります。志賀・草津高原ルートのナナカマド、万座ハイウェー・紅葉台のハウチワカエデ、松川渓谷の紅葉など、挙げればキリがありません。
しかし万座温泉象徴の山である熊四郎山や万座山には、どういう訳かあまり紅葉する樹木がありません。また、紅葉だけでなく、万座よりも標高の高い本白根で見られるミネザクラも見られません。樹木の種類が非常に乏しく見えます。これは一体どういうことなのでしょうか。

草津の森林インストラクター・湯田さんの話では、その昔、嬬恋村干俣仁田沢から万座の旧熊池付近まで、草津営林署が管理する森林鉄道が運行され、ブナやミズナラなどの大木が切り出されていたといいます。旧熊池からさらに黒湯沢付近まで下ると樹齢400年とも思われるブナやミズナラの大木がいくつもあり、そうしてそれらの後継樹(稚樹)も順調に育っています。
これらのことから太古の昔、おそらく縄文の頃は万座にも多くのブナがあったであろうと推測しています。となれば、ブナとセットで見受けられるハウチワカエデもあった事でしょう。また、サクラの木がないのは古くにこの地に移住してきた人類(万座の温泉は自然湧出のため、古くからの人類の利用が確認されている)が何らかの理由により伐採したのだと考えています。

さて、この木本・草本の種類に乏しい現在の万座の森林を、かつてのさまざまな樹木が生い茂り、季節の花・新緑・紅葉と美しい四季に彩られていたはずの森林に戻そうとする試みを、「虹の谷」計画と呼んでいます。

もちろん現在の万座は上信越国立公園の中心地に位置しており、それだけで充分な自然の形態は残っています。しかし私が考える森林と人間の関係はいわゆる「里山」的なものであり、春のネマガリタケの筍の恩恵しかないのでは非常にさみしく、本来の関係ではないように思います。生態系として豊かな、命を育む森と人類は共にあるべきです。

今年はまず、万座ハイウェー・紅葉台付近のハウチワカエデ・コハウチワカエデ・ウリハダカエデの木から種を採り、我が社の敷地内にばら撒いてみました。次に旧熊池湖群探勝コース沿いにあったムラサキヤシオの種を今年道路工事があった跡の土手にばら蒔いて見ました。気分は花咲かじいさんです。種をばら蒔いたぐらいでは実際には難しいでしょうが毎年続けていこうと思っています。もちろん今後の調査も怠らずに。

私の最も好きな花の一つ、ムラサキヤシオ。花の色と新芽のバランスがいい。

万座ハイウェーの本白根沢、紅葉台。ここのハウチワカエデとウリハダカエデのコントラストは絶妙。

日本紅葉100選・松川渓谷
手無峠・小串くつろぎの滝

現在の熊四郎山は世紀を隔てた後
…こうなる。


※この試みはもう止めました。万座の天然林を笹藪こぎしながら何百時間と歩いてみて、今この林分を構成しているコメツガ・トウヒ・オオシラビソなどの亜高山帯針葉樹林は、やはり何百年かそれ以上も前からこのままだったのだという事が解かったからです。

 車ですぐそこの場所だから、直線距離1キロだからと言って、そこにある種子を新たな場所へ持ち出すということは、自然の種子散布スピードを遥かに上回る行為です。何百年もかかってやっと新たな場所に種子がたどり着き分布拡大するはずのところを、人間の勝手な解釈で車を10分間走らせ種を採取し、別の場所に持ち入れ分布を拡げてしまう…これは、現在社会問題になっている外来種問題そのものです。そして、その莫大な負の遺産を残した先人達もまた、綺麗だから、日本にない珍しい種だから…と、豊かさを求め、良かれと思ってやったことに他なりません

 そして、もし同種の種を採ってきたとしても、外見では解からなくても遺伝子レベルではきっとその土地に適応した進化が起こっていることでしょう。

 極相に限りなく近い、安定した天然林には、新たな種子を持ちいれる必要はありません。そこにいるはずの種がベストであり、生物多様性の保護とは実際には生物固有性がたくさんあるということを保護するということなのです。

 今回の試みではなんとか両方の理念の折り合いがつくように検討しましたが、私には解決策を見出せませんでした。よって、この試みはいったん凍結します。

平成18年10月18日 木村道紘

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