夏を告げるアサギマダラ

アサギマダラは、羽を広げると10cm以上になる大型の蝶です。前翅は黒、後翅は茶色の地色ですが翅の中央部から基部にかけて透き通るようなみずいろの部分があり、夏から秋の高原を舞う姿は優雅です。万座周辺では成虫が好むヨツバヒヨドリの花がずいぶんあるため、時期が来ると大群になってやってきます。特に松尾川上流や毛無峠付近では驚くほどの個体数が見られます。

名前の元となった浅葱(あさぎ)色とは浅いネギの色という意味で、薄い藍色、みずいろ、うすあお色の事です。飛ぶ姿は“ふわりふわり”といった様子で、涼しげな色を身にまといゆるやかに舞う姿は、高原に夏の訪れを告げるにふさわしい役者と言えるでしょう。

アサギマダラは夏の北上・秋の南下を繰り返す驚くべき「渡り蝶」としても知られており、この実態を明らかにするために全国でマーキング調査が行われています。自然関係の施設や団体が主催した一般対象のマーキング会もたびたび開催されています。これまで確認された最長移動距離は白馬→沖縄県間で、なんとその距離は約1700km!。中には気の遠くなるような距離を移動してくるものもいるのです。

しかし実際には隣町の須坂市などでは杉林内などで普通に幼虫・蛹が見つかっており、全てが渡ってきている訳ではないようです。万座のヨツバヒヨドリに吸蜜しているのをよく見かけるのは、実はオスはピロリヂディンアルカロイドを摂取しないと成熟できず、ヒヨドリバナ属などの花にその物質が多く含むために強く誘引されているのだそうです。つまりオスは子作りできるようになるためにせっせとヨツバヒヨドリに吸蜜しているのです。

『いつかマーキングしてやろう。』思っては見るのですが、実際アサギマダラの近くに行くとその美しさのあまり手が出せなくなります。またその時、『マーキングすることで飛行や繁殖に影響したらどうしよう…』とも思ってしまいます。やがて『マーキングは自分でするのではなくてマーキング固体を見つけてやろう!』と思う事にしました。…すると2003年の8月、ついに「山のホテル・ASANO」さんの前で明らかに文字の書かれた固体がいたのです!!!

  


しかし、よく見てください。右の写真。広げた左翅を拡大してみると…

MANZA?まんざって書いてある!!!

そうなんです。これは恐らく前日にでも、どこかの団体が万座でマーキングしたものなのでしょう。…残念。私が発見したアサギマダラの移動距離は0m〜100m程でした。…意味なし。
いいや。また来年に期待しましょう。

山ガイドの下見に白根山へふらりと立ち寄った時、はるか上空を何かが旋回している様に見えました。『珍しいな。オオタカかな。』と思ったがよく見るとアサギマダラでした。風の吹くままにゆるやかに大空を舞う姿は、目的をもって移動する種とはどこか違うように見えました。

私達もこんなふうに自然のリズムで、風の吹くまま気の向くままに生きることができたらどんなにいいだろうかとも思ったのでした。

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