万座牛池・かたらいの森にはコメツガやトウヒの大木があり、亜高山帯の大径木を間近で観察することができます。どの木も大きく根上がりとなっており、なんだか不思議の森にでも迷い込んだようです。
それでは、根上がりの木のできる訳をご紹介します。
亜高山帯の林床はチシマザサに覆われているので、種が地面に落ちても笹の下では光が届かず、発芽することができません。種は日光が射す場所に落下する必要があります。それが、古い倒木や根株の上なのです。
図?@ 根株上での更新 | 図?A 倒木上での更新 | |
では、森の中での更新の様子を探って行きましょう。
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?@まず、木が枯れて倒れて根株が残ります。 | ?Cやがて根が地面にまで届きます。 | |
?A種子が付着し、芽が出てきます。 | ?D若木が充分に成長する頃には古い根株は腐朽してなくなります。 | ||
?B稚木が成長しています。 | ?E冬は同じ場所から数本の木が伸びているのがよく解ります。 |
このような亜高山帯針葉樹林独特の世代交代の仕方を倒木更新といいます。
本白根山探勝歩道脇で、トウヒの稚樹が一列に並んでいました。笹を掻き分けてのぞいてみるとやはり下には大きな古い倒木がありました。苔むした倒木の表面は凹凸が多くて水持ちも良く、種が根おろすには最適の場所−稚樹にとってのゆりかごだと言えるでしょう。
大きな根上がりの木は、ツキノワグマが冬眠するのにも使う事があるそうです。根上がりの木は人工林では当然見られない、天然林ならではのものです。亜高山帯の森を歩く時は木の生え方を少し観察しながら、このお話を思い出してください。