トウヒの球果?

【トウヒ】
常緑針葉樹。深山に生え、大きいものは高さ40m、直径1,3mにもなり、樹冠は広い円錐形。樹皮は灰色がかった暗赤褐色で、鱗片状にはがれる。葉は枝に密着してつき、扁平で短く長さ7〜15?_。葉の裏側は白みが強く、ねじれて裏側が見える状態になっていることが多いため、遠目にはほかの針葉樹よりやや青みを帯びているように見える事がある。雌花(球果)は長楕円形・紅紫色で枝の上につく。やがて垂れ下がり淡黄褐色となる。雄花は淡黄色で枝先につく。


万座−白根付近は、亜高山帯特有の針葉樹林帯です。気候は故郷の北海道北広島市よりも寒く厳しいように思われますが、故郷で良く見かけたような木があります。

トウヒは北海道のエゾマツに大変よく似た木です。実際にエゾマツの本州産の変種であるとも言われています。長い枝はあまり上向きにならず、むしろ水平かやや下向きに伸びて先端だけが上に反っていることが多く、風格のある樹形を作っています。

ある時、自然解説のために各樹木のマツカサ(球果)を拾い集めていました。トウヒの下でに来ると、例の長楕円形のマツカサがいっぱい落ちています。

ふと見上げると何か違った形のものが木いっぱいに付いていました。


『…あれ?なんだろう。雄花はあんなのだったかな…。』もしや変種かも?とも思い、サンプルをいくつか採取し帰って調べてみることにしました。

図鑑を広げてみると、なんとあの違ったものはアブラムシの虫こぶだったのです。正確には解りませんがおそらく「エゾマツカサアブラムシ」のものだと思われます。



上の写真は虫が出た後でした。8月に幼虫室が開孔する前のものは右の写真です。

こんなにたくさんのアブラムシがいればトウヒは枯れてしまうのではないか?と思うのですがこの被害のみで樹木が枯死する例は少ないそうです。また、成長にもほとんど影響がないそうです。事実良く見るとおおよそ全てのトウヒがこの虫こぶを持っていました。このアブラムシは宿主を殺してしまうような事はしないようです。

しかし木の生命力は凄いものですね。さまざまな生き物が木に依存して生きています。こんな厳しい環境の亜高山帯針葉樹林でも同様に。今日見つけたアブラムシはこのトウヒに依存している生き物の内の何種類分の一だったのでしょうか。

これがトウヒの球果
虫えい(虫こぶ)の断面図

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