とぎほり石(嬬恋村)

天明3年の浅間押しで流されてきた とぎほり石


 天明3年(1783年)8月5日(旧暦7月8日)の浅間押しでここに押し流されてきた石です。得意な形を、馬や牛の踏みつけてしまった刺を抜くために使った道具に見立てて、「とぎほり石」といわれてきたものです。

 上の斜面に大きな動物の歩いた足あとのように爪の食い込んだあとが点在しています。「天狗の爪あと」などともいいつたえられています。

天明3年の噴火の直後に浅間山に登った村人が、白髪のような長い髪の毛状のものをたくさん見かけて、拾って帰った。「お天狗様の髪の毛が散乱していた」と、当時の人たちは、言い合った。火山噴火を、天狗の超人的能力と関係あると、思ったようです。

鎌原の立野にある大きな浅間石の上でインドーさんと呼ばれるお坊さんが修行をしていました。ある日お坊さんが浅間石から飛び降りると足にトギ(トゲ)が刺さってしまいました。トギはなかなか抜けません。お坊さんは、近くにあった尖った浅間石にすわって、トギをほじくったところすぐにトギが抜けたのでした。それからこの岩塊のことを“トギホリ石”と呼ぶようになりました。