愛郷---上信高原民話集(二)

蹴鞠神社と音無川


 「なぁ、おんじい、なぁ、おんばあ、そんつぎの話はどうしただぁ。」

 「あぁ、そんじゃぁつぎの話をしてやんべぇ。」

 昔なぁ、源頼朝と言うえらい将軍様がなぁ、木曽義仲という武士と戦をして勝ったんだと、そしてその残党を追って浅間山の六里ガ原で巻狩をしたんだそうだ。その時に今の干俣村で陣馬をはったんだと。村の衆はなぁ、将軍様が川の音がうるさくて良く眠れねぇと聞いたもんで、二またになっている川の片方をせき止めたんだと、そうしたらいい具合にいっぺぇヤマメが取れたんで将軍様に献上したんだと、将軍様は、えらく喜んで川の俣を干したこの地を干俣とし、村の衆に干川っていう名字をくれたんだと。それからなぁ、干して水の行かなくなった方の川を音の無い川、音無し川、水の流れる川を干俣川と呼ぶようになっんだと。

 それからなぁ、よく将軍様が陣馬で蹴鞠をして遊んでいたもんで、将軍様が帰った後地に神社を建てて、その名を「蹴鞠神社」と呼んで大切にしたんだと。

 「あれ、はぁ寝てるよ。ばあ、早く布団にねかしてやれやぁ。」

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