松島榮治シリーズ『嬬恋村の自然と文化』(五十五)

万座のゴヨウマツ

▲万座のゴヨウマツ

 わが国では、松は長寿を象徴するものとして、古来より尊ばれ、『万葉集』にも「神さび立ちて栄える、千代の松の樹」とある。また、めでたいものとして、正月の飾りなどに使用される。いずれにしろ、山奥の厳しい自然環境の中にあって、なお長寿を保ち続ける老松には、畏敬の念禁じ難いものがある。

 万座温泉の東方、朝日山ゲレンデ第一リフトの始点を僅かに登った所に、一本のゴヨウマツが立つ。周囲はゲレンデの為、夏は草原の中に、冬は雪原の中にその勇姿を誇っている。平成12年6月、村教委社会教育課は、地元万座の要請を受けて、群馬県文化財保護審議会委員の安盛博氏を迎えて、そのゴヨウマツの調査を実施した。報告書によると、大きさは、目通り周5.05メートル、樹高25.0メートル、根元周11.9メートルで、樹齢は約400〜500年と推定されている。そしてその所見として「厳しい自然環境の中で、長く成長を遂げ、太い根元はどっかと大地に根を下ろして安定した極めて力強い樹形を保ち、端整な感じを与える」と記している。

 時あたかも11月21日、東京では、長い年月を生き抜いた樹木の保護活動に取り組む「巨樹・巨木保護中央審議会」が設立された。そして、全国93の市町村から「森の巨人たち百選」が選ばれ巨樹・巨木を通して文化や環境についての取組も始まり、全国的に巨樹・巨木への関心も高まってきた。

 現在群馬県下で巨樹・巨木とされ天然記念物に指定されている樹木は145本を数える。その内ゴヨウマツ(ヒメコマツ)は、利根郡白沢村の「書院のゴヨウマツ」と同郡川場村の「吉祥寺のヒメコマツ」があるが、その大きさでは、いずれもこの万座のゴヨウマツに及ばない。

 多くの天然記念物とされる巨樹・巨木は、多かれ少なかれ人為的な保護により今日に到っている。ところで、この万座のゴヨウマツは、標高1,800メートルの厳しい自然条件の中で、枯死や伐採をされること無く、自力によって今日に生き続けてきた。まさに奇跡であり、天然記念物に相応しいものである。

※この記事は広報つまごいNo.578〔平成13年(2001年)1月号〕に記載されたものです。

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